逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 執事とリズが深々と頭を下げた。

「どうぞつつがなく」
「つつがなく、万事がうまくいきますように」

 ハインツ邸に白く朝霧が立ち込めている。

「そう緊張するな。俺はどうしてもそこに立ちたいとは思っていないのだ」
 アーロンはそう返すと、
「では、行ってくる」
 ソフィーに微笑んだ。

 この出立はいつもと違っていた。
 彼がこの邸に帰って来たとき、その立場は大きく変わっているかもしれないのだ。

 今日は、王宮にこのグリント―ル全土から諸侯が集まって来る。
 次期国王の選定会議が開かれようとしていた。


          * * * * *
< 398 / 466 >

この作品をシェア

pagetop