逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「ほとんど決まっているでしょう、あのアーロン・ハインツ殿ですよ。なにしろ三大豪族の出身ではあるし、実力を兼ね備えてはいるし」
「あのセンダで同胞を助けて、しかも隣接するフレッグ領への戦火を防いだのでしたね」
そこまで言うと急に声を潜めた。
「しかし、あの和平会見の一件は見ものでしたな。ガイゼル伯は代表になりたいと名乗りを挙げながら、マリンドウからセンダへ変わったとたんに逃げたのだから」
「いまだに国中の噂になっておりますぞ。なんと計算高くて臆病なご仁だろうとね」
「だがハインツ殿が国王になったらガイゼル伯はどうなりますか。ハインツ殿は遺恨を持って迫害する手段に出ますかね」
「そんなお人柄にも見えませんが。まああの方はまだ若い、これから長く続く統治の間には何かあるかもしれませんがね」
「何かと言うと?」
「目に見えぬ迫害かもしれないし、はたまた左遷かも知れないし」
「そうですな、我々はそんなとばっちりが来ないように心せねばですね」
小さな笑いが起こった。
その声と共に集団が遠ざかって行く。
ガイゼルは色を失った。
『ハ、ハインツ殿が国王になったら迫害だと? 左遷だと?』
頭を抱えてへたり込んだ。
* * * * *
「あのセンダで同胞を助けて、しかも隣接するフレッグ領への戦火を防いだのでしたね」
そこまで言うと急に声を潜めた。
「しかし、あの和平会見の一件は見ものでしたな。ガイゼル伯は代表になりたいと名乗りを挙げながら、マリンドウからセンダへ変わったとたんに逃げたのだから」
「いまだに国中の噂になっておりますぞ。なんと計算高くて臆病なご仁だろうとね」
「だがハインツ殿が国王になったらガイゼル伯はどうなりますか。ハインツ殿は遺恨を持って迫害する手段に出ますかね」
「そんなお人柄にも見えませんが。まああの方はまだ若い、これから長く続く統治の間には何かあるかもしれませんがね」
「何かと言うと?」
「目に見えぬ迫害かもしれないし、はたまた左遷かも知れないし」
「そうですな、我々はそんなとばっちりが来ないように心せねばですね」
小さな笑いが起こった。
その声と共に集団が遠ざかって行く。
ガイゼルは色を失った。
『ハ、ハインツ殿が国王になったら迫害だと? 左遷だと?』
頭を抱えてへたり込んだ。
* * * * *