逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「ちょっと待ってくれ。仮にその方向に向かうとしてもだ、俺を王にすることに反対する者もいるだろう」

「我こそ頂点にという者はいるでしょう。だがあなたの実力は承知のことだ。それに」
「それに?」

「この国の成り立ちです。今まで君臨していたグリンドラ王朝は百年に満たないものです。ご存じのように百年前、北方の異民族が攻めてきた。当時頂点にいたのはグリンドラ家、ハインツ家、レブロン家だ。この三大豪族は協力して侵略を防いだ。その後で国を総括する長が必要だと悟った、その方が外敵に対しやすいからです。ハインツ家とレブロン家は広大な領地を持っている。そのためグリンドラ家に依頼した。だからあの時点でどの家が王座に就いてもおかしくなかったのです」

 当時を遠望する語り口だった。

「それでグリンドラ王朝が発足した。その二代目が賢王だっため王朝が安定したのです。しかし三代目のグリンドラ三世の統治は惨憺(さんたん)たるものだった。しかしその王も今はいない。つまりこの国の始祖の三家で残っているのはアーロン・ハインツ、その人だけなのです」
「・・・・」
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