逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「これをもってもあなたが王座に就くことに何の不思議もないのです。これは国民の誰もが知る事実です」
 光る眼でアーロンを見た。

「国の長の力量で国が栄えるのか滅びるのか、それはあのバッハスで一目瞭然でしょう。あなたにはグリント―ルを統治していける才覚がある。だからこそ王座に就いていただきたいのです」
 そう言って頭を下げた。

 面を伏せたまま微動だにしない。

 その沈黙を破るように、
「しかしだ、こんな重大事の答えをすぐ出せるものではない、そうだろう」
「もちろんです、熟考なさってください。あなたの両肩にかかる重圧はけた違いに大きなものだ、それは十分わかっています」

 直線すぎるシュテルツの目が光っていた。
 しばし見つめ合う。
 先に目を逸らしたのはアーロンだった。

 窓から青空が見えた、その中に雲がポツリと浮かんでいる。
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