逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「今あなたが考えていること、その一つを当ててみましょうか」
「え?」

「国のこと、諸侯のこと、各領地のこと。何より近隣のバッハスやマリンドウのことを考えている。そしてその中に見え隠れしているものがある」
「見え隠れ?」

「ソフィー様のことでしょう。あの方のことで迷うものがある、この王宮に連れて来てうまくやっていけるのかと」
「・・・・」

「だが考えてみてください。あなたは今でも王宮での仕事が山積している。場合によっては何日も家に帰れないことがある。そのとき彼女は一人で過ごすのです。あなたの屋敷だから心配はないかもしれない、だがいつ何時、何があるとも知れない。しかしこの王宮で一緒にいればいつでも助けられる、いつも見守っていられるのです」

 そう言ってじっと見つめた。
「これをどう思われますか」

 アーロンも真正面から見つめ返す。
 そしてふっと、
「お前も食えん奴だな、そんなことを持ち出して」

「そうですか」
 とぼけたように返した。

「考えてみるよ、それも含めてじっくりとな」

 互いに感情のない顔をしていた。
 そして同時に笑った、声を立てて笑っていた。

 壁のツタが、ゆらゆらと揺れていた。


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