逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 その日から黙っていることが多くなった。
 窓際でじっと何かを考えている。

 リズが心配して声をかけると、
「なんでもないのよ」
 吹っ切るように笑顔を見せる、だが・・。

 このハインツ家でさえ大きな存在だった。使用人達、屋敷の切り盛り、出入りする各要人。果たして自分に務まるだろうかとさえ思う。

 そして、ラクレス領の領主である父はもういなかった。母も、兄弟もいない。
 後ろ盾が皆無だった。そんな立場で王宮に上がるなどと、まして王妃としてあまたの女官らの上に立つなどと。

 もしアーロンがその立場になるのならついて行きたい、その気持ちはあるのだ。しかし・・。
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