逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 そんなある夕方だった。

 部屋の外で物音がした。なんだろうと窓から顔を出してみる。
 すると二階にあるこの部屋のほぼ真下、そこで土を耕している者がいた。
 ア―ロンだった。
 え? と二度見する。

「何をなさっているのですか」
 階段を降りて近づいた。
 ただでさえ忙しい彼がスコップを持って庭仕事をしているなどと。

「ここを耕しているのだ」
「はい?」
「耕して、花畑を作ろうと思ってね」

「それなら庭師に頼めばいいのでは。あなたはお休みください、王宮でも激務が続いていると聞いていますが」

「それでも自分でやっておきたいのだ」
「何を植えるつもりなのですか」
 一歩近づいて聞いてみた。

「フィアーラの花だ」
「フィアーラ?」
「さっきラクレス家に立ち寄ったのだ。今は花が終わって種が出来ていた。それを少し拝借したのだよ」

「なんの、ためにですか」
「ここに植えて咲かせたいのだ、俺達の寝室の下に、いつでも見られるように。そしたら君を少しは慰められるかと思ってね」
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