逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 王宮の庭に、馬車がぞくぞくと到着する。
 家紋を染め抜いたそれが列をなす光景は壮観だった。

 馬車は大会議場の入口で止まり、各地の諸侯が下りてきた。
 彼らはあいさつし、談笑しながら階段を上って行く。

 そのなかにガイゼル伯がいた。
 あのセンダの和平会見に出ることを拒否した伯だった。彼はあたりの集団には加わらず、顔を伏せて隅から上がる。

 あの一件から自分の評価が変わったのを知っていた。
 自ら立候補しておきながら直前になって逃げだした、そう揶揄されている。

 あれから屋敷に籠っていた。
 だが今日は欠席する訳にはいかなかった、それほど重大な会議だった。

「本日は注目でございますね」
「そうです、果たして誰が選ばれるでしょうか」

 雑談しながら近づいてくる集団がある。
 ガイゼルはあわてて柱の陰に隠れた。
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