逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「ほとんど決まっているでしょう、あのアーロン・ハインツ殿ですよ。なにしろ三大豪族の出身ではあるし、実力を兼ね備えてはいるし」
「彼はあのセンダで同胞を助けて、しかも隣接するフレッグ領への戦火を防いだのでしたね」
そこまで言うと急に声を潜めた。
「しかし、あの和平会見の一件は見ものでしたな。ガイゼル伯は代表になりたいと名乗りを挙げながら、マリンドウからセンダへ変わったとたんに逃げたのだから」
「いまだに国中の噂になっておりますぞ。なんと臆病で計算高いご仁だろうとね」
「しかしハインツ殿が国王になったらガイゼル伯はどうなりますか。ハインツ殿は遺恨を持って迫害する手段に出ますかね」
「そんなお人柄にも見えませんが。まああの方はまだ若い、これから続く何十年もの統治の間には何かあるかもしれませんがね」
「何かと言うと?」
「目に見えぬ迫害かもしれないし、はたまた左遷かも知れないし」
「そうですな、我々はそんなとばっちりが来ないように心せねばですね」
小さな笑いが起こった。
その声と共に集団が遠ざかって行く。
ガイゼルは色を失った。
『ハ、ハインツ殿が国王になったら迫害だと? 左遷だと?』
頭を抱えてへたり込んだ。
* * * * *
「彼はあのセンダで同胞を助けて、しかも隣接するフレッグ領への戦火を防いだのでしたね」
そこまで言うと急に声を潜めた。
「しかし、あの和平会見の一件は見ものでしたな。ガイゼル伯は代表になりたいと名乗りを挙げながら、マリンドウからセンダへ変わったとたんに逃げたのだから」
「いまだに国中の噂になっておりますぞ。なんと臆病で計算高いご仁だろうとね」
「しかしハインツ殿が国王になったらガイゼル伯はどうなりますか。ハインツ殿は遺恨を持って迫害する手段に出ますかね」
「そんなお人柄にも見えませんが。まああの方はまだ若い、これから続く何十年もの統治の間には何かあるかもしれませんがね」
「何かと言うと?」
「目に見えぬ迫害かもしれないし、はたまた左遷かも知れないし」
「そうですな、我々はそんなとばっちりが来ないように心せねばですね」
小さな笑いが起こった。
その声と共に集団が遠ざかって行く。
ガイゼルは色を失った。
『ハ、ハインツ殿が国王になったら迫害だと? 左遷だと?』
頭を抱えてへたり込んだ。
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