逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 ・・ぼんやりと、まどろんでいた。
 ほんの少し眠ったのか記憶が飛んでいる。

 さっきまで夢を見ていた。
 ずっと昔の、幼かったころの夢だ。
 顔もはっきり覚えていない母に抱かれていた。その膝でまどろんでいた。若草色のチェッカード柄のドレスが目に入った。

 どこかの空で、トンビが鳴いていた。ピーヒョロロと目覚めの耳に滲んでくるような声だった。
 ベアトリスが微笑みかけていた。
「目が覚めたのですか」
 優しく母はそう語りかけていた。

 そして今、目の前にもチェッカードの柄があった。
 ソフィーが着ているドレスだった。

「なんだ、もう服を着たのか」
 不満げに言ってみる。
「だって、こんな」
 恥じらいが浮かんでいた。

 困りきった彼女を再び抱きしめた。
「愛している」
 耳元でささやいた。

 ソフィーは顔を上げ、そんな彼女に笑いかけた。
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