逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 大会議場に諸侯が集まっている。

「それでは本日、大変重要な会議を始めさせていただきます」
 シュテルツが口火を切った。

 議事の手順を述べ、次期国家元首の選定であることを宣言する。

 彼は予定通りこの国の三大豪族の史実から始めた。
 その唯一の後継者であるアーロン・ハインツの話題に移っていく。そして彼を抜擢する方向に進めた。

 ア―ロンは最前列に座っていた。
 シュテルツや政務の高官が用意した席だった。

 会議で国王に認定されれば戴冠式の打ち合わせに入る、その流れを見越しての配置だった。
 当のア―ロンは無表情だった、そしてこの国の国旗を見つめていた。

 議事は滞りなく進み、アーロンが新国王に推挙された。
 あとは異議のある者が申し出るだけになっていた。

 そのまま新国王が決定するかに思えた。
 そんなとき挙手するものがあった。あのガイゼル伯だった。
「恐縮ながら、私の質問をお許しいただけますでしょうか」

 シュテルツが促すと、
「ハインツ殿の出自についてでございます。伝統ある家柄のご子息である、それは紛れもない事実です。しかしながら一つ懸念する事があるかと思われます」

 皆がガイゼルに注目する。
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