逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 アーロンの部屋は最上階にあった。
 ドアを開けると中央にテーブルがある。窓辺には仕事で使うのだろう机と書棚が用意されていた。
 そして奥のほうにもう一つ扉がある。そこが寝室だろうか、会議や軍の所用で遅くなった時にそこで休んでいると思われた。

「アーロン様は今どこに?」 
 部屋を見渡してみる。誰もいる気配はなかった。

「本日は、昼から二回目の国王選定会議が行われております」
 案内してくれた用人が言った。
「ハインツ様もその会に出席されていると存じますが」

「そうですか。では私は到着したことを報告してまいりましょう」
 執事が庶務の方に出向いていく。

 残ったソフィーとリズが改めて部屋を見た。
 ア―ロンらしい居住まいで机に数冊の本がある。壁には見慣れた彼の服が掛けられていた。

 そのとき部屋のドアがノックされた。
 出迎えたリズに、
「皆様のお食事はいかがしましょう。今夜はご宿泊になられるのでしょうか。それなら準備に掛からせていただきますので」
 女官がうやうやしく頭を下げる。

「あ、いえ、私たちはそんな予定は」
 用が済めばハインツ邸に帰るつもりだった。

「それでは昼食をご用意しましょう。そして後ほど女官長がご挨拶に参りますので、よろしくお願いいたします」

「女官長様ですか、そんな方がわざわざこちらへ?」
 リズが驚いた。
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