逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 と、そんなときだった。ドスンと音がした。

 何かが壁にぶつかったような音だった。
 え、と辺りを見た。
 それは間をおいて再び聞こえた。この部屋の奥にある扉の向こうからのように思えた。

 扉に近づいてみる。迷いながらそっと開けた。

 とたんにわっと風が吹き込んで来た。カーテンが大きくあおられ、机にある花瓶がグラグラと揺れる。
 とっさに走り寄って押さえた。
 床に落ちずにほっとする。

 思わず息をついたときだった。

 はためいたカーテンの陰から手が伸びてきた。
 それがソフィーの腕をガシッと掴む。
 とっさに逃げようとした。
 しかし手は許そうとせずカーテンの向こうに引きずり込まれた。

 悲鳴をあげた。
 その口をふさぐものがある。
 ア―ロンだった。

 あおられたカーテンの向こうはベッドだった。彼はそこで寝ていた。
 ベッドに引き込まれてその顔を見た。

 ニヤッと笑っていた。


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