逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 会議室。
 場内が紛糾していた。
 ア―ロンが出席していないのだ。

 ガイゼルらに問い詰められてシュテルツは困惑していた。


          * * * * *


 まさかこんな昼間にアーロンが寝ているなどと。
「具合でも悪いのですか」
 心配するソフィーに、
「ふて寝していたのだ。ちょうどいい所に来てくれたよ」

「会議が開かれているのではないですか」 
「ああ、俺が出席しないものだから紛糾しているだろうな」
「え、なぜ出席しないのですか」

「誰が出てやるものか、あんな会議などへ」
「はい?」
「せっかくソフィーが来てくれたのだ、俺はここに籠ることにするぞ」

「こもるって、あっ、やめて、こんな昼間から。それにここは王宮なのですよ」
「それがなぜいけないのだ」
「な、なぜって」
 言葉に詰まる彼女を両手で抱き込んだ。


 コツコツコツ・・。
 廊下を執事とリズが歩いてくる。それぞれの用をすませて帰って来たのだ。

 最初のドアを開けて中に入った。
 ソフィーはいない。
 しかし、奥の寝室からアーロンたちの気配が漏れている。

 二人が顔を見合わせた。思わず息をのむ。

 ただちに回れ右をした。
 抜き足差し足で部屋から出る、そして廊下の向こうに離れて行った。
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