逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
戴冠式、そして
 街道を馬が疾走していた。
 先頭は宰相顧問のオルグ、その後に続くのは護衛の三名だ。やがて彼らは東南の小さな町についた。

 そのはずれに古めいた館があった。
 いわくありげな男が周囲をたむろしている。

 オルグは護衛を待機させて入口に向かった。
 値踏みするような男の視線を受けて、

「今、通してもらえるだろうか、こんな時間だが」
「旦那も好きだねぇ、こんなまっ昼間からかい。どうぞ入って下さいよ、誰かいるだろうから」
 彼らはニヤつき、その間を抜けて行く。

「おや、お客かい。この時間は空いてるよ、誰でも好き放題選べるよ」
 あけすけに女が言う。着崩れた格好をしていた。

「ベスという女はいるか」
「あの子をご所望かい。でもあいにくベスだけは」
 言いかけた時かたわらの老婆が、
「大丈夫だよ、あの方が反故(ほご)にしちまったからね」

 そう言うと奥に向かって、
「おおいベス、あんたをご指名だよ、とっとと出てきな」

 薄暗い奥から女が出てきた。こんな所に、と思うほど美しい顔立ちをしている。
「お前がベスか」
 女がうなずき、オルグは後について行く。

 角を曲がって女達の死角に入ると、
「ちょっと訳ありだ。手短に言う、お前、手離した子に会いたくはないか」
 ベスがはっとした。

「会わせてやる、なんならその子を引き取って一緒に暮らせるようにしてやってもいいんだ」
「えっ」














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