逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「事情は全部知っている、信じるかどうかはお前次第だ」
懐から札入れを出した。
「当座の生活費だ、お前たち親子のだ。手放した子は三ヶ月だったか。母が恋しくて毎日泣いているはずだ、会いたくはないか」
ベスが目を見張った、見る見る涙がうかんでくる。
オルグは周囲を見渡すと、
「この店の用心棒は何人だ、店の前にもいたが」
「今はあの人達だけです」
「だったら裏口は?」
「この向こう。でもそこから出たら表の男に見つかってしまいます」
オルグはベスの手を取った、急いで裏口に向かう。
外に出てピューッと指笛を吹いた。
「はしれっ! あの道の角へ向かって走るんだ」
ベスを促した。
表の男がそれに気付いた。
「おいっ、逃げたぞ、捕まえろ」
ベスの足は遅い、用心棒がすぐさま追いついた。
最初の男がオルグに掴みかかった。
オルグが向き直って応戦する。
ほかの用心棒もやって来る。
だがオルグの護衛が彼らに飛び掛かった。さっきの指笛で護衛を呼んだのだ。
屈強の護衛が即座に男をねじ伏せた。
「急げ、一刻も早く王宮へ帰るのだ」
オルグはベスを馬の前に乗せて走り出した。
背後でさっきの女がわめいている。
その声がしだいに遠くなっていった。
* * * * *
懐から札入れを出した。
「当座の生活費だ、お前たち親子のだ。手放した子は三ヶ月だったか。母が恋しくて毎日泣いているはずだ、会いたくはないか」
ベスが目を見張った、見る見る涙がうかんでくる。
オルグは周囲を見渡すと、
「この店の用心棒は何人だ、店の前にもいたが」
「今はあの人達だけです」
「だったら裏口は?」
「この向こう。でもそこから出たら表の男に見つかってしまいます」
オルグはベスの手を取った、急いで裏口に向かう。
外に出てピューッと指笛を吹いた。
「はしれっ! あの道の角へ向かって走るんだ」
ベスを促した。
表の男がそれに気付いた。
「おいっ、逃げたぞ、捕まえろ」
ベスの足は遅い、用心棒がすぐさま追いついた。
最初の男がオルグに掴みかかった。
オルグが向き直って応戦する。
ほかの用心棒もやって来る。
だがオルグの護衛が彼らに飛び掛かった。さっきの指笛で護衛を呼んだのだ。
屈強の護衛が即座に男をねじ伏せた。
「急げ、一刻も早く王宮へ帰るのだ」
オルグはベスを馬の前に乗せて走り出した。
背後でさっきの女がわめいている。
その声がしだいに遠くなっていった。
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