逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
露見していくもの
 書類をめくっていて一か所に目を止めた。
 そこに商業の有様が記載されている。

「どうかなさったのですか」
 問うオルグに、
「いや、今までの経過を調べていたのだが」
 
 几帳面なシュテルツの筆跡が随所にある。
 彼は晩年、アーロンに政務を教えようとしていた。国の頂点に立つためにこの分野にも精通しておいてくださいと。
 
「やはり王都の商売はカライルが仕切っているな」
「彼は穀物相場も先見の明があるし、武器商人ともやり取りがあって剣の材料になる鋼鉄に手を広げていますので」
 
 アーロンはオルグを見た。
 精通しているのはお前もだろう、胸の内でつぶやいた。
 彼は二年間地方にいた。それでいて打てば響く答えが返ってくる。

『この者を政務に戻せば、必ずアーロン様のためになります』
 シュテルツがいい、その通りの働きを見せていた。
 
「あいつの遺産があちこちにあるな」
「え?」
「いやなんでもない」
 
 思わず苦笑し、またページを繰ろうとした。













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