逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
カライル、カライル・・頭の中で反芻する。
するとかすかな声が蘇った。
『思うに、カライルはケイネの弱みを知っていると見たぞ』
かつてシュテルツが言っていた。ハインツ邸にやって来たときだ。
『あくまで俺の憶測だが』
と前置きをして、
『カライルは鉱山があるラクレス領に食指を伸ばしている。ラクレス公が行方不明になったのを機に、あの家の執事や家令を引き抜いているのだ』
唐突に話し始めた。
あのとき、シュテルツは何かを掴みかけていたのではないのか。
しかしそれを聞き出すことなく終わっていた。
直後にワイトによって【歳の交換】という衝撃の出来事が起きたからだ。
そして間を置かずバッハスの未曽有の侵攻に遭遇した。
何かを掴みかけて、しかし手繰り寄せる糸が弱かったのか、シュテルツ自身も再び話題にする事はなかった。
今になってそれが思い出される。
ラクレス領の鉱山だと?
ダン・ラクレス公が行方不明になったのを機にだと?
剣の材料になる鋼鉄にも手を広げていただと?
そうだ、あのとき彼はこうも言っていた。
『バッハスとケイネの接触を密告する投書があったのだ。そのケイネとカライルもどこかで繋がっているのだ』
「どうかなさったのですか」
目を据えたアーロンに聞き、
「今すぐカライルを呼んでくれ、この王宮にだ、この俺の前にだ」
低く彼が答えた。
* * * * *
するとかすかな声が蘇った。
『思うに、カライルはケイネの弱みを知っていると見たぞ』
かつてシュテルツが言っていた。ハインツ邸にやって来たときだ。
『あくまで俺の憶測だが』
と前置きをして、
『カライルは鉱山があるラクレス領に食指を伸ばしている。ラクレス公が行方不明になったのを機に、あの家の執事や家令を引き抜いているのだ』
唐突に話し始めた。
あのとき、シュテルツは何かを掴みかけていたのではないのか。
しかしそれを聞き出すことなく終わっていた。
直後にワイトによって【歳の交換】という衝撃の出来事が起きたからだ。
そして間を置かずバッハスの未曽有の侵攻に遭遇した。
何かを掴みかけて、しかし手繰り寄せる糸が弱かったのか、シュテルツ自身も再び話題にする事はなかった。
今になってそれが思い出される。
ラクレス領の鉱山だと?
ダン・ラクレス公が行方不明になったのを機にだと?
剣の材料になる鋼鉄にも手を広げていただと?
そうだ、あのとき彼はこうも言っていた。
『バッハスとケイネの接触を密告する投書があったのだ。そのケイネとカライルもどこかで繋がっているのだ』
「どうかなさったのですか」
目を据えたアーロンに聞き、
「今すぐカライルを呼んでくれ、この王宮にだ、この俺の前にだ」
低く彼が答えた。
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