逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 ソフィーが目を丸めた。
「あなたワイトね。いったいどうしていたの、ずいぶん久しぶりじゃない」

「あちこちへ調査に行っていたのだ。俺のフネ(・・)に使える燃料とかを探しにな」
「え、ねんりょうって」

「またこやつは訳の分からんことを」
 執事が苦虫を潰し、
「この王宮に連れてくる訳にはいかないと言ったのですよ、それが私らの馬車の屋根にへばり着いていただなんて」
 リズも目くじらを立てた。

「俺はソフィーに会いたかっただけなのだ、もう時間がないからな」
「ソフィーって、あなた、王妃様に向かってなんという口の利き方ですか」

「俺にはそこらが分からないんだ、なぜソフィーをソフィーと呼んだらいけないんだ」
 子供のように聞いてくる。
「いいのよ、そんな呼び名など。でもさっきの『もう時間がない』って、一体どういうことなの」

「俺はもうクニ(・・)に帰るんだ。いつまでもここにいても仕方がないからな。それで最後の挨拶をしようとソフィーとアーロンに会いに来たんだ」

 今度こそ執事とリズが目を吊り上げた。
「アーロンですと! あの方を呼び捨てにするのですか」
「そうです! 国王陛下に対してなんということを」


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