逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 検察官に囲まれてカライルが蒼白になっていた。
「ですから、私はケイネ伯にあの国境への軍資金を融通しただけなのです」

「しかしお前はケイネ伯家の裏の事情を知っていたのではないか。あのとき、ケイネ伯は突然赴都に帰ったのだ。そのことについてお前はいろいろ調べていたそうだな」

「それは大枚の遠征費をお貸しした立場上、何があったのかを知る必要があると思ったからです」
「それで、いったい何を掴んだのだ」
「なにを、と申されますと」

「調べはついている。あの直後にケイネ家の用人がお前の屋敷を訪ねたそうだな。用人はまとまった金をお前に渡したと言っているぞ」

「そ、そんなことを」
 言いかけてから、
「それを一体誰からお聞きになりましたので」
 言い直した、事態が切羽詰まっていると感じたからだ。

「用人本人だよ。ケイネ伯家の、その向きに使われそうな使用人を特定して脅したらすぐに白状したのだ」

 うっとカライルが息をのむ。
 固まったような彼は、しかし忙しく目を動かしている。貪欲ななにかが全身から滲んでいた。
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