逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
伝書鳩
 迷路のような洞窟を、足音を消して歩く。
 向こうに光が漏れている所が見えた。

「朝になっていたのだな」
 ヴェンがほっと息をつく。

 出口らしき所にツタが垂れていた。侵入口を隠した格好だった。

 そこを抜けると一気に外光にさらされた。
 目の前に湖が広がっている。

「こんな所に湖が!」
 そう言えばここの中腹に灌漑用の湖があるのを聞いたことがある。

 昨夜ソフィーを追ってきたのは岩場だった。するとここは洞窟の裏だろうか。

 湖畔に木立が並び、後ろには岩山が迫っている。
 少し歩くと見覚えのある岩石があった。
 あのかろうじて入れる岩肌も見つけた。
< 45 / 466 >

この作品をシェア

pagetop