逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「カライルと言ったな」
 部屋の奥から声がした。
 凛としてあたりを圧する響きだった。

「お前の所業はいずれ明白になる。この場で包み隠さず白状しろ、それが身のためだ」

 検察官の向こうからの声だった。カライルはその出所を探ろうと顎を挙げた。

「国王陛下の御前だ、身を慎め」
 衛兵がピシリと放った。

「ひっ、こ、国王陛下!」
 
 すべての視線が自分に集中していた。
 罪を暴こうとするように突き刺さってくる。

 入口の扉は厳重に閉められ、そこを守る監察官に一分の隙もない。

 カライルが色を失った。
 その体から力が抜け落ちる。やがて、

「すべてを、お話しします」
 観念したように告げた。

 書記官がペンを取った。
 これから始まる供述を書き留めるためだった。

「先ほども申し上げました通り、私はケイネ伯に大枚の軍資金を貸しました。その返済が履行されず国境へ遠征した詳細を調べたのです」
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