逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 ワイトが王宮の武器庫を見て回っている。
「ふーん、この時代の武器はこういう構造なのか」

 係官が困惑して伺いを立てると、
「まあ、差しさわりのない物は見せてやってくれ」
 アーロンが苦笑して許可を与えた。

 軍事施設には国家機密のスポットがある。
 兵が目を光らせて案内するが、しかしワイトは細部を調べる様子はない。
 一通り見たあとは軍馬の厩舎や伝書鳩の小屋に行っていたりする。

「馬が笑った!」
 目を剥くことをいうかと思えば、途中で見た若い女官を追いかけていたりもする。

「胡散臭い奴だ」
 アーロンが眉根を寄せた。

「ワイト殿が!」
 誰かが飛び込んで来るたびに、なにっ、と目を剥いたものだ。
 それがたび重なって、
「あいつは一体いつまでここにいるつもりなんだ」

 ぼやく夫に、
「でも、ワイトにはすごく感謝しているのよ」
「なにを感謝しているんだ」
「私は、あの人にすごいことをしてもらったのですもの」
 妻は意外なことをいう。
< 451 / 466 >

この作品をシェア

pagetop