逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 彼が語った顛末は次のようなものだった。

 始まりは、国境でバッハスと対峙していたケイネ親子の迂闊な行動だった。

 ケイネと息子のギースは暇つぶしに賭博場へ行った。そこで店主の大男に目を付けられた。あろうことか彼はバッハスの幹部だったのだ。

 大男は親子を脅し、国境を守るラクレス隊の内部事情を聞きだそうとした。親子は情報を小出しにしてしのぐ。
 ついに大男は重大な軍事機密の漏洩を迫った。バッハス軍がグリントールに総攻撃をかけるためだった。

 彼は『密書』という形に残る文書で指示して来た。
 あろうことかその密書を、ギースが紛失してしまったのだ。

 ケイネは狼狽した、そして途方もない策を打ち出した。
 密書を所持していると見られるダン・ラクレス公の殺害だった。

 そして隠密裏に実行した。

 そんな重大極まりない秘密を、カライルはひょんなことから耳にした。

 軍資金を返済してもらうおうと奔走していたとき、ケイネ隊の一兵を篭絡した。ケイネの弱みを掴むことが目的だった。

 その隊員はカライルの誘い水に、ラクレス公殺害という重大事までをも暴露した。
 カライルが絶句した。
 途轍もない情報だった。
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