逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 ラクレス家の敷地に多くの人が集まっている。

 屋敷の向かいの小高い丘に、ダン・ラクレスが埋葬されようとしていた。
 春になればまたフィアーラの花が咲く丘だった。

 地中に棺が下ろされていく。
 じっと見守るソフィーの肩をアーロンが抱いていた。

 国王夫妻が喪主になるという異例の葬儀だった。
 参列者は多く、粛々と葬儀が進められて行く。その指揮はアーロンが執っていた。

 ソフィーは周囲の山を、森を見た。あちこちに思い出があふれる場所だ。
 感慨深げに見入っている姿に、
「ここには管理人を置こう。このラクレス邸はいつでも滞在できるようにしておくつもりだ」

 うれしそうにうなずいて、
「ここでいろいろな事があったわね」
「そうだな、俺はここで君に『歳の交換』のことを聞いてもらったのだ」

 急に若くなったアーロンがその戸惑いを語った。
 月光に照らされた顔には深い苦悩が滲んでいた。
 その彼をソフィーは正面から受け止めたのだ。
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