逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「この間ね、ワイトが言ったのよ。一緒にうちゅうへ行かないかって」
 馬車はゆっくり進んでいた。
 帰りの道で話しかけてみる。

「一緒にだと!」
「そうなの。もう準備が出来たからソフィーひとりなら連れて行けるぞ、ですって」
 といって反応を見た。

 案の定眼光が鋭くなっている。
 どこかでヒヤリとし、どこかでときめくものがある。

 その声が怒気を含む前に、
「行く訳ないでしょう、そんなの絶対に有り得ないわ」

「からかったな」
「あ、いえそんな」

「不敬だ、国王に対してなんたることを」
 本気で口をへの字に曲げている。

 完全無欠にみえるアーロンの、どこかおさなく見える姿が新鮮だった。
 彼は今、ソフィーに集中しているのだ。
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