逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 影が消えてもしばらくそのままでいた。
 小さな紙には書き切れない事態になっている。詳細を報告するため自分も一旦帰るべきだろうか。

 だが目の前には不可解なことが山積みだ。
 ソフィーが言う『向こうの洞窟の怪我人』とはどういうことだろう。

 デイズに聞いてみた。

「向こうの怪我人だって?」
 驚いた彼に、
「あ、いや、こんな洞窟はまだ幾つもあるのか」
 言葉を変えた。

「そりゃ太古からある洞窟だ、そこらを掘れば幾らでもあるだろうよ」

 デイズは『向こうの存在』を知らないのだ。たぶん他の負傷兵もだろう。
 話してみるべきだろうか。それはまだしない方がいい、何となくそう思えた。

 ソフィーは『向こうの洞窟の存在をこっちのみんなに知られたら厄介だ』と言っていた。
 深い事情がありそうだった。


            * * * * *

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