逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 そんな情景を残して馬車はゆっくり出発する。
 ワーワーという歓声は鳴りやまず、やがて遠ざかって行った。

「まさに、人と人との出逢いだな」
「そうでしょう」
 小さな点になった彼らはまだ手を振っていた。

「めぐり会って遠ざかる・・、それにも何かの意味があるかもしれないね」
「ええ。それが何なのか、知ることが出来たらと思うわ」

「そうだね。一緒にさがして行こう、これからあちこちをめぐって」
「四季を渡って?」
「ああ、東西南北もくまなくだ」

 互いに顔を見合わせた。
 そして笑った。

 行く手にはラクレスの山々が見えていた。
 季節は初冬に向かっていた。

 二人が出逢って間もなく一年を迎えようとしていた。


          * * * * *
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