逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 久しぶりに、アーロンとソフィーがハインツ邸に帰っていた。

 ワイトがぜひそうしてくれと頼んだからだ。
 その懇願する様子に予感めいたものを感じていた。

 ハインツ邸の奥庭に、大きな銀色の円盤があった。
 その前にワイトが立っていった。

「世話になったな」
 感慨深げな彼をアーロンとソフィー、執事やリズが見守っている。

「アーロンが国の統率者になった。だから安心して出発できるんだ」

「しかし俺が舵を取ることでこの国がどう進むのか。吉と出るか凶と出るかはわからないことだ」

「それははっきりわかるんだ、この国がどう動いて行くのかが」
 確信するように言う。
「だから心置きなく旅立てるのだ。ここを出発すれば俺は遥か彼方の宇宙へ飛んでいくことになる」

 はるかかなた? うちゅう? とぶ? リズと執事が首をかしげた。
 だがアーロンとソフィーは穏やかに見つめている。

 そしてワイトは続けた。
「二十年後に、俺はもう一度ここへ来ることになる」

「え、二十年後だと?」
 はっきり年数を切った彼に聞いた。
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