逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「そんなに怒るな。そうなるんだって。せいぜい楽しみに待っていることだな、俺は間違いなくやって来るんだ」
と言って笑った。
「それまで元気でいろよ。生まれてくる娘を大事に育てるんだぞ」

 再びアーロンの青筋が立つ。
 ワイトがしたり顔でそれを見る。

 彼は満足したようにうなずくと、ソフィーに目配せした。

 白い物体に向いて歩み出す。ドアを開けて、
「それじゃあな」
 と乗り込んだ。

 プルルル・・とエンジンがかかった。
 ワイトが窓からおどけたように手を振っている。

 次の瞬間、物体は空高くまでとび上がった。
 上空で数度旋回した。
 太陽の光を受けてキラッキラッと眩しく光る。
 そして青空に吸い込まれるように消えて行った。

 地上には、呆然と見送るアーロンたちがいた。

 サワサワと風が吹きわたっていた。


          * * * * *
< 474 / 477 >

この作品をシェア

pagetop