逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「最後までちゃらけた男だったな」
 アーロンがポツリと言う。
 
 静かな夜更けだった。
 王宮の木立のどこからかフクロウが鳴いている。

「そうね、信じられない事ばかり起きてびっくりさせられて。でもワイトに助けられたことも事実なのね」

「奴は言っていたな。必ず迎えに来ると」
「なんだか信じられないわね、二十年後だなんて」

「あいつはこうも言っていたぞ、ソフィーの身代わりに連れて行くんだと。お前だと思って大事にするんだと」
「そんな雲をつかむような話を」
 小さく笑った。

 しかしアーロンには幸せそうな笑いに見えた。
「おい」
「え?」
「そう言われてうれしかったんだろう、少しは」
「なにを言っているのよ、そんな訳はないでしょう」

 あわてて否定する、しかし、
「正直に言ってみろ、どっちがいいんだ、本当は」
「どっちがいいかって、そんな言い方をしないで。私は絶対に」

 迫ってくる彼はまるで別人のようだった。
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