逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「それよりも退職式だ。式はあのアーロン・ハインツの分も一緒に行おうと思ってな」
「は? アーロンの誕生日はまだ半年も先でございますが」

「お前達は長年の盟友であろう。お前は執務でアーロンは軍と分野は違うが、いっそ合同でやったらどうだ。賑やかな式になると思わないか」
 名案だとばかり笑っている。

 思わず息を止めた。アーロンには聞かせたくない。
 バッハスとの懸念が増大している、そんなとき軍のトップの交代などと。

 シュテルツは黙り込み、
「アーロンには私から言おう。お前は宰相の引継ぎを準備しておいてくれ」

「さようで、ございますか」
 重い足取りで部屋を出た。

『まだ半年の任期があるのに退職式だとっ』
 怒るアーロンが目に浮かぶ。
『式を済ませて後の指揮をどうやって執れというのだ。それとも同時に司令官の職も退けというのか』


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