逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
ラクレス公
 ラクレス隊にのっぽの兵がいた。

 見回りのとき先頭を行くのが好きだった。
 その日も一番乗りで行く。

 角を曲がったとき、倒木が道をふさいでいるのが見えた。
 仕方なしに最後尾から引き返えす。

 のっぽはがっくりした、こうなると自分がしんがりになるからだ。

 皆が行き過ぎたあとに何かが落ちていた。
 一枚の紙だった。
 
 拾い上げてそれを見る。 
 首を傾げて眺めているうちに隊が離れていく。
 
 慌ててポケットにしまった、そして後を追った。

 惜しむらくは、彼は、文字が読めないということだった。
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