逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 そんなさなか、ダン・ラクレスを訪ねてくる一団があった。
 臣下に守られたソフィーだった。

『一体どうしたというのだ、こんな戦場に』

 ソフィーは目を泣きはらしていた。母親が、ラクレスの妻が亡くなったのだと言った。
 病身な妻だった。しかしなぜよりによってこんな時に。

 すがりついて来たソフィーを抱きしめた。
 腕の中の娘に、
『重大な事態が勃発している。悪いが私は帰れない』

 ソフィーが見上げた。
『すまないが葬儀は執事らとすませてほしい。用が済んだらただちに帰る。酷なことだが聞いてくれるか』

 ソフィーがじっと父を見た。そしてうなずいた。
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