逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 岩肌には凹凸がある。
 デイズはそれを掴んで前へ進もうとしていた。

 歩くたびに脚が痛む、受けた刀傷が治らないのだ。
 だがいつまでも寝ていられない。傷口を庇うように歩こうとした。
 
 と、肩を貸す者がいた。
「あ、ありがと・・」

 言いかけて息が止まった。
「アーロン・ハインツ司令官殿!」

 国軍の長のアーロンだった。

 ヴェンも目を剥いて、
「どうされたのですか、一体」

 (あるじ)がこんな山中にいることが信じられない。

「どうしたもこうしたも。じっとしていられるか、こんな面白い話を聞いて」
 手にはヴェンが託した伝書鳩の文があった。


< 74 / 477 >

この作品をシェア

pagetop