逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「この間は、本当にありがとうございました」
 ソフィーが深々と頭を下げた。

 洞窟の広場にアーロンらと車座になっている。

「お屋敷にお邪魔して、そのうえ兵達の治療費を出していただきました」
「礼を言うのはこっちの方だ。国軍の部下であるデイズの看護もしていてくれたのだから」
 目に感謝の念がこもっている。

「ソフィー嬢、これまでのいきさつを話してもらえないか。この洞窟のこと、国境での出来事、そしてあの川のほとりでケイネ伯のギースに連れられていたことを」

 ソフィーはじっと考えていたが、
「まず、ひと月前に国境で紛争がありました。突然バッハスが越境してラクレス隊と衝突しました。怪我人が出た時点で彼らは引き上げたそうです。それで父は負傷兵をこのラクレス領に帰して治療させようとしました」
< 75 / 477 >

この作品をシェア

pagetop