逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
臣下ゆえの苦悩
　作業兵が忙しそうに働いていた。
　シュテルツとアーロンの退職式の準備をしているのだ。

　次期宰相に内定している新参者の怒鳴り声が響いていた。

「あれが次の宰相だと。おい、お前は有能な後継者を育てなかったのか」

「育てたさ。だがそいつは王の意向で地方に左遷されたよ。今じゃその地で平々凡々と暮らしている」
　とため息をついて、
「そういうお前はどうなんだ。軍の跡継ぎは別の意味で重要だろう」
　
「右に同じくだ。あいつは些細なことで王宮から出て行った。ほとぼりが冷めたら帰ると言っていたのに、寄宿した商人の家で商売に興味が湧いたんだとさ。今ではマリンドウまで手を広げる大商人になっているよ」

　マリンドウとは、グリント―ルと隣接している新興国だ。
　
　バッハスと違って温厚な民族で、折に触れ交流している友好国だった。ちなみにここの王女がグリンドラ王の妃として輿入れしている。
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