逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 やがて馬車は屋敷に着いた。
 執事らが出迎える。

 アーロンの次にフードを被った少年が出て来た。
「これは? 一体どなたでございますか」

「いや、大丈夫だ」
 それだけ言って自室まで連れて行った。

 ソファーに向き合って座る。
「安心しろ、この部屋は俺だけだ」
 そう言うとフードを脱がせた。

 案の定、あり得ないほど真っ白い顔が現れた。目鼻口が恐怖のため引きつっている。

「お前、あのときのあいつだろう」
「・・・・」
「廃墟にいただろう。飛んだり跳ねたりしていたあの白い者だろう」

 少年は困った様子で「アーウー」と喃語のような声を発していた。

「言葉がわからないのか」

 思わず頭をかく。
 正直厄介だと思った。
 だがあの廃墟で彼がいなかったらとも思う。あの娘、ソフィーはどうなっていたことか。
< 97 / 477 >

この作品をシェア

pagetop