恋は青い色をしていた。

「杏!」


「うおっ...る、かくん?!」



振り返った先が好きな人だとわかると途端に手のひらは熱さを知って、ぜんぜん可愛くない声が出た。


琉火くんがここにいることも、顔はいつも通り無表情で、だけど汗が滲んで息が切れてる琉火くんなんて初めてで。


嬉しくて嬉しくて、さっきまでのもやもやなんて飛んでいってしまった。



「...杏は、俺のこといらなくなったの?」


「え、琉火くんが要らないなんて人この世にいるの!?」


「...もうなんでもない。はあ、走ったらちょっと冷静になった、何してるの俺」



琉火くんの家、ここからずっと遠いじゃん。走るのだって遅いのに、動くのも夏の暑いのも大っ嫌いなくせして、ずるいよ。



私には見られまいと顔を背けて額を抑える琉火くんが可愛くて、ついそのご尊顔を拝もうと名前を呼んだ。



「るかくんるかくん」


「はいはい帰る。.....明日19時駅前集合」



聞き返す間もなく気だるげに手を振って、駅の方へ歩いていってしまった。


心配ない、琉火くんの声ならずっと覚えていられる。
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