恋は青い色をしていた。
手を繋ぐ恋人同士、友達同士、歳を重ねた夫婦。私たちはどれでもない。
歩幅が小さくなって追いつけなくなっても、琉火くんに止まってもらえる理由なんて持ってないんだ。
「...琉火くんの隣、今日くらいは譲りたくないの」
「杏、ごめん聞こえない」
「あ、ごめんね!私あんまり似合わないタイプで!あと靴擦れ!琉火くんこそ浴衣が良かったなあ、絶対似合う!」
浴衣なんて面倒だと表す顔がこれでもかと歪む。
人混みだって予想通りに大嫌いだろうし、夏自体が地獄だと思ってる人だ。
なのに、私が去年好きだと言ったかき氷やらパイン飴を覚えていてくれて、列に並んでくれて、買ってくれて。
もう目いっぱいにハートだった。
こんなに感情が揺らされて上に下に心が動くのは琉火くんだけ。
そう、こんなふうに。
「色見君!」
彼女があの噂に出てくる子だって一瞬でわかった。