理央くん!大好き!かなさん!好き好き!
聞き込み
俺、佐久間理央は秋のことについて少し聞き回っていた。
「すいません」
「あっはい!なんですか?」
こいつは確か、秋とよくご飯とか食べてたはず。
「秋が嫌がらせされてるとこ、見たことあります?」
「秋が?……それって、秋が言ったんですか?」
「はい、まあやっと、認めたというか」
「そうだったんですね。……5ヶ月くらい前、秋と一緒に中庭でご飯食べてたんです。そしたら、そのときに、3年の先輩にお味噌汁かけられたんです。私を庇って。」
「庇った?」
その表現だと、えっと、真田さん?が味噌汁かけられたっていう感じになるんだけど。
「私、あの、いじめられてて、5ヶ月前まで。噂とかは無視してたんですけど、だんだんとエスカレートというか、その、階段から突き飛ばされたりとか、そういうのになってきて、そんな時に秋と一緒にご飯食べたので……」
あれ
ということは、秋は俺とか関係なく庇ったからいじめられてるんじゃん。
「いじめられるきっかけみたいなのはある?」
「……言いにくいんですけど、」
「言って」
「佐久間くんと、あっ佐久間くんでいいですか?」
「ご自由にどうぞ」
「では、……佐久間くん多分覚えてないと思うんですけど、委員会のことで、私と2人で話したことがあるんです。家庭科室で。」
あー……なんかあったかも?
「その、それが3年の人にバレてしまって、あっ私は下心全くなかったんですよ。むしろ少し怖いくらいでした。あっ失礼か。」
確かに、怯えてた感あったなー。
普通ならあれ30分はかかる内容なのに20分で終わらせて逃げるように帰っていったもんな。
「いや、いいよ、まあ察するに、秋が真田さんの身代わりになった、と。」
「はい、そうです。私、階段から突き飛ばされた時とか、その、怪我しそうな時?は、だいたい秋に助けてもらってたんですよ。だからあざとかもなくて、私はいじめられてるって、声を上げ辛くて。
いざ相談しようと思ったその日に、秋がいじめられるようになってしまって。」
「なるほど、分かった。ありがとう。」
「いえ、あの……秋は頑なに言いませんでした。言わせませんでした。絶対にダメでした。多分、佐久間くんにバレたくなかったんだと思います。
失礼します。」
真田さんは一礼してから教室へと戻っていった。
「理央、お前体調どうだ。しんどかったら秒で言えよ。」
不意に後ろから林先生の声がした。
「……ねえ、林先生。なんで秋は俺に言わないんだろう。病気のせい?……だったら俺は、すごく嫌だ。」
「そうだな。……あいつなりに頑張ってるんだと思うよ。お前ができるだけ幸せな人生、送れるように。」
林先生は唯一俺の余命を知っている人だ。知っているからといって別に、できるだけお前と過ごしたい。とかいってベタベタくっ付いてはこない。
当たり前の日常をくれる。
「先生、もし俺が死んだら、秋はどうなると思う?」
「悲しいだろうな。今までずっと一緒だったんだろ?」
「うん、まあ小2からだけどね。」
「小2?転校でもしてきたわけ?」
秋がうちに来た理由。それは俺が秋と一緒にいたかったからだ。
「まあね。」
「……秋ってさ、慣れてるんだよね。いじめ。いや、痛めつけられるの。」
この人になら話しても良いだろう。そう思った。
「昔からってことか?」
「親からだよ。」
「……」
「秋は施設で暮らしてた。幼い頃から虐待を受けてきて、ずっと耐えて、俺と同じ保育園だったんだけど、あざがあったのが見るだけで分かった。痛々しくて見てられなくなった。」
「……それ本当か?」
「もう秋の親は死んでるよ。自殺。」
「だからもう謝れって言っても謝ってくれない。……ある日から秋は保育園に来なくなった。虐待の発覚。保育士はバカだったのかな。俺でも見て分かった。保育士も薄々気づいてはいたと思うけど、黙ってた。」
「そんで、施設行って、俺が気になって施設に通うようになった。そんで、俺の家があいつを引き取った。」
「え、引き取るって、え?」
「うん、だから兄弟なんだよ。少なくともあいつはそう思ってる。まあ、養子縁組には入ってないから、まあ他人って言えば他人だけど。」
「なるほど、な。」
「一緒に暮らしてるし。」
「え?一緒に住んでんの?」
「そうですよ。俺の親が死んでから、まあずっと。」
「そうだったんだな。……なあ、死ぬの怖い?」
この人に今怖いと言ったらどうなるのだろう。
何かしてくれるのだろうか。でも、死ぬの自体は怖くない。
ただ、一つだけ
「秋を残していくのが怖いです。俺も生きてやりたい。」
「そうか……お前は?お前自身怖くないのか?」
俺は……
「そりゃ、昔は怖かったですけど、もう今は、諦めかけかな。」
「俺はお前に生きてほしい。これだけ言っとくぞ。」
林先生はこれだけ言うと自分とは反対の方向へと去っていった。
つくづくずるい先生だと思いながら壁に寄り添いそのまま膝が崩れるように座った。
怖いんだ。秋の泣き顔を思い出すだけで、こっちまで泣きなくなるんだ。
だから俺は、生きたい。
生きたいよ
「すいません」
「あっはい!なんですか?」
こいつは確か、秋とよくご飯とか食べてたはず。
「秋が嫌がらせされてるとこ、見たことあります?」
「秋が?……それって、秋が言ったんですか?」
「はい、まあやっと、認めたというか」
「そうだったんですね。……5ヶ月くらい前、秋と一緒に中庭でご飯食べてたんです。そしたら、そのときに、3年の先輩にお味噌汁かけられたんです。私を庇って。」
「庇った?」
その表現だと、えっと、真田さん?が味噌汁かけられたっていう感じになるんだけど。
「私、あの、いじめられてて、5ヶ月前まで。噂とかは無視してたんですけど、だんだんとエスカレートというか、その、階段から突き飛ばされたりとか、そういうのになってきて、そんな時に秋と一緒にご飯食べたので……」
あれ
ということは、秋は俺とか関係なく庇ったからいじめられてるんじゃん。
「いじめられるきっかけみたいなのはある?」
「……言いにくいんですけど、」
「言って」
「佐久間くんと、あっ佐久間くんでいいですか?」
「ご自由にどうぞ」
「では、……佐久間くん多分覚えてないと思うんですけど、委員会のことで、私と2人で話したことがあるんです。家庭科室で。」
あー……なんかあったかも?
「その、それが3年の人にバレてしまって、あっ私は下心全くなかったんですよ。むしろ少し怖いくらいでした。あっ失礼か。」
確かに、怯えてた感あったなー。
普通ならあれ30分はかかる内容なのに20分で終わらせて逃げるように帰っていったもんな。
「いや、いいよ、まあ察するに、秋が真田さんの身代わりになった、と。」
「はい、そうです。私、階段から突き飛ばされた時とか、その、怪我しそうな時?は、だいたい秋に助けてもらってたんですよ。だからあざとかもなくて、私はいじめられてるって、声を上げ辛くて。
いざ相談しようと思ったその日に、秋がいじめられるようになってしまって。」
「なるほど、分かった。ありがとう。」
「いえ、あの……秋は頑なに言いませんでした。言わせませんでした。絶対にダメでした。多分、佐久間くんにバレたくなかったんだと思います。
失礼します。」
真田さんは一礼してから教室へと戻っていった。
「理央、お前体調どうだ。しんどかったら秒で言えよ。」
不意に後ろから林先生の声がした。
「……ねえ、林先生。なんで秋は俺に言わないんだろう。病気のせい?……だったら俺は、すごく嫌だ。」
「そうだな。……あいつなりに頑張ってるんだと思うよ。お前ができるだけ幸せな人生、送れるように。」
林先生は唯一俺の余命を知っている人だ。知っているからといって別に、できるだけお前と過ごしたい。とかいってベタベタくっ付いてはこない。
当たり前の日常をくれる。
「先生、もし俺が死んだら、秋はどうなると思う?」
「悲しいだろうな。今までずっと一緒だったんだろ?」
「うん、まあ小2からだけどね。」
「小2?転校でもしてきたわけ?」
秋がうちに来た理由。それは俺が秋と一緒にいたかったからだ。
「まあね。」
「……秋ってさ、慣れてるんだよね。いじめ。いや、痛めつけられるの。」
この人になら話しても良いだろう。そう思った。
「昔からってことか?」
「親からだよ。」
「……」
「秋は施設で暮らしてた。幼い頃から虐待を受けてきて、ずっと耐えて、俺と同じ保育園だったんだけど、あざがあったのが見るだけで分かった。痛々しくて見てられなくなった。」
「……それ本当か?」
「もう秋の親は死んでるよ。自殺。」
「だからもう謝れって言っても謝ってくれない。……ある日から秋は保育園に来なくなった。虐待の発覚。保育士はバカだったのかな。俺でも見て分かった。保育士も薄々気づいてはいたと思うけど、黙ってた。」
「そんで、施設行って、俺が気になって施設に通うようになった。そんで、俺の家があいつを引き取った。」
「え、引き取るって、え?」
「うん、だから兄弟なんだよ。少なくともあいつはそう思ってる。まあ、養子縁組には入ってないから、まあ他人って言えば他人だけど。」
「なるほど、な。」
「一緒に暮らしてるし。」
「え?一緒に住んでんの?」
「そうですよ。俺の親が死んでから、まあずっと。」
「そうだったんだな。……なあ、死ぬの怖い?」
この人に今怖いと言ったらどうなるのだろう。
何かしてくれるのだろうか。でも、死ぬの自体は怖くない。
ただ、一つだけ
「秋を残していくのが怖いです。俺も生きてやりたい。」
「そうか……お前は?お前自身怖くないのか?」
俺は……
「そりゃ、昔は怖かったですけど、もう今は、諦めかけかな。」
「俺はお前に生きてほしい。これだけ言っとくぞ。」
林先生はこれだけ言うと自分とは反対の方向へと去っていった。
つくづくずるい先生だと思いながら壁に寄り添いそのまま膝が崩れるように座った。
怖いんだ。秋の泣き顔を思い出すだけで、こっちまで泣きなくなるんだ。
だから俺は、生きたい。
生きたいよ