理央くん!大好き!かなさん!好き好き!
『あんたって子は!なんでそんなに服を汚すんだよ!あたしはそんな育て方をした覚えはないよ!』


私だって、汚したくて汚したわけじゃないよ。



それに、この服も、何日目なのか分からないよ。



私だって、そんな育て方された覚えないよ。



それにね、育てられた覚えがそもそもないんだよ。



「ごめんなさい、ごめんなさい。」



『謝って済む問題かい!?』




ねえ、なんて言ったら許してくれるの?



ねえ、お母さん、どうしたらいい?



『この子は!』



お母さん、壁に押し付けないで。怖いよ。






痛いよ。








『ねえ、秋ちゃん、ここの傷、どうしたの?』



「転んだの!」




佐々木先生はいつも聞いてくるなぁ。



もし私がお母さんによく怒られてるって言ったら、どうするんだろうなぁ。



もし私が言ったら、お母さんはいじめられる?



もし言ったら、お母さんにまた怒られる?




私、どっちも嫌だなぁ。




「先生、私、なんでもないよ。」




『ほんとに?』



あ、理央くん。



今日も綺麗な服着てるなぁ。



綺麗な顔してるなぁ。



『ちょっとこっち来て。』



「なーに?」



私、汚いから触らないほうがいいよ。理央くん。



『ねえ、この傷、本当に転んだの?』



理央くんが首の傷を指さしてきた。




これは、お母さんに蹴られた時にできた傷。



理央くんになら言ってもいいのかな。




「お母さんにちょっと蹴られちゃった。」




『え?本当に?』




「本当だよ。今もまだちょっぴり痛いの。」



『そうなんだ。』



「うん。」



『それ、本当!?』


佐々木先生、聞いてたの?


「本当だよ。」


あれ、これ、言っていいんだっけ。






『ねえ、あんた、言ったの?ねえ、言ったの?』



怖い、怖いよ。




どうしたの?お母さん。


『この首の傷のこと言ったの?』



「言ったよ。」



『あんた、何してるの、バカなの!???』




「え」



ダメなこと言った?私、言っちゃいけないこと言った?



『こっちきなさい!』



「お母さん」




どこいくの?



お風呂なんか行って、どうするの?



なんでお水溜めてるの?



やっとお風呂入れてくれるの?



水は嫌だなぁ。あったかいお湯がいいよ。




あれ?これ、なんだっけ。



保育園で工作をした時に先生使ってたなぁ。硬い紙を切ってた。これ、何を切るんだろう。



『これ、飲みな!』



なに、これ。まずい。


出しちゃおう。



痛!いたいよ、お母さん、私、手首から血が出てるよ。


あれ、お母さん、なんで寝てるの?


お母さんも血が出てる。


なんで?でも痛くなさそう。


お母さん、痛いよ。


「おかあさん、痛い、血が、ある。怖いよ、ねえ、おかあさん!」




お風呂が赤色に染まってくよ。


なんで?


なんか、なまぐさいにおいがするよ。


「おかあさん!私、血が、止まったよ、でもまだ痛いよ。絆創膏どこにあるの?」


なんで返事しないの?


どうして?



誰か、誰かお母さんを助けて。



「だれかー!!、だれかー!!、」


『秋ちゃん?!どうしたの?!その手、どうしたの?!』


「佐々木先生!お母さんが、血がいっぱいで、なんで」



『おうちに上がるね!』






先生走るのが早いから追いつかない。



先生、電話かけてる。



『秋ちゃんもこっち!』



あ、これ、きゅうきゅうしゃだ。







『秋ちゃん。お母さんと、少しだけ会えるよ。』


ガラッ



「おかあさん!」



おかあさん、何か言ってる?

この変なマスクのせいで聞こえないのかな。



外してあげて、顔を近づけた。



『あんた、なんでいつもあたしの邪魔するのよ。……なんで、あんたなんか、生まれてきたのよ。」



え、おかあ、さん?


なんでそんなこと言うの?





『ご臨終です』





ねえ、どうして、どうして?



そんな悲しいこと言うの?



なんでそんな、なんで……










…………





ねえ、お母さん











どうして私を産んだの?



















































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