甘くて優しい、恋の香り。
誰もいないダンス部の練習場で。
聡太先パイのジャージ片手に、わんわん泣いた。
なんで。
なんで、私。
見ているだけで満足なんて、嘘。
聡太先パイのそばにいたい。
私が隣にいたい。
泣きじゃくりながら、聡太先パイのジャージを抱きしめた。
鼻先に、柔軟剤の良い香り。
恋の香りだ、と思った。
甘くて、優しい。
聡太先パイの香り。
「……好き、聡太先パイ」
ひとり呟いた告白に、
「え?」
と、返事が返ってきた。
「……え?」
声の方向を見ると、そこには聡太先パイがいた。
「えっ!?なんで、なんでいるんですか!?」
「え?いや、ジャージ忘れたから。思い出して」
聡太先パイは私の顔をじっと見て、
「え?安堂、泣いてるの?」
と、そばに来た。
「泣いてないです」
ごしごしと拳で涙を拭う。
「聡太先パイは早く戻らなくちゃ、彼女が待っていますよ」
と、思ってもいないことを言いながら。