【完】おにぎり恋愛日和‼︎

そう言って彼はカーディガンを半ば力づくで投げつけてきた。
頑固と言うか親切というか、何だこの状況は。なぜこんなに喧嘩腰なんだ。

羽織るまで帰さないといわんばかりの圧に、私は受け取ったカーディガンに袖を通すことにした。

「天音くんって華奢な方だと思ってたけど、やっぱり大きいよね」

淡色ブルーのカーディガン。モヘアみたいなふわふわな触り心地で、生地感もしっかりある。けれどやっぱり際立つ私と天音くんの体格差。羽織ってみたら結構ぶかぶかだった。指先まで隠れる袖の長さである。

「ありがとう。じゃあ、ありがたく使わせてもらうね」

でも着たら着たで温かくて、また今すぐに脱げと言われたら寒すぎで帰したくない。ぬくぬくと暖を取っていると、ふわりと鼻を擽ぐる良い匂いがした。

「これ香水かな? すっごい天音くんの匂いがする」


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