【完】おにぎり恋愛日和‼︎
するりとそのまま手を繋がれたまま、天音くん導かれるように私は前に足を進める。
シンと静まり返る公園に響く2人分の足音。この無言が辛い訳ではないが、"いつも"のようにお喋りがしたかった。しかし言葉を探しては、諦めての繰り返し。どうしたらいいのだろうかと、神様に縋るように月を見上げていた。
そういえば、こうやって天音くんの後ろ姿見るの久しぶりかもしれない。
最初の頃は天音さんの後ろを着いていくことが多かった。でもそれは怒っている訳ではなく早歩きの癖がついただけなのだと後から知ったけれど、最近はずっと隣を歩く機会が多かった気がする。
私も早く歩く癖がついたのか?
いいや、違う。天音くんが私の歩幅に合わせてくれていたのだ。
うーん、さて。これからどうしようか。
いろんな事案が頭を駆け巡るが、この手の温かさだけは紛れもない事実。この包み込まれるように伝わる温もりも、手を握る力加減が優しいのも、その理由は考えるまでもない。私はそこまで鈍感で馬鹿じゃないのだ。
「ねぇ、」
「何?」
「まさか行かないよね、合コン」
「・・・行くわけないじゃん」