【完】おにぎり恋愛日和‼︎
事務所に到着するなり、連行された場所は一角にある会議スペースだった。
確かに目の前には有名なスイーツ店のフルーツタルトと湯気の立つホットコーヒーがあって、かなりのオモテナシをされているように見える。
場所がここじゃなきゃ喜んで早速食べたいところだが、そうともいかなかった。
「いきなりごめんね、三鈴ちゃん」
「ケーキ食べて帰ってもいいですか?」
「あはは、ダメ」
「ですよね」
目の前に鎮座する千堂夏樹がニコニコと意味深な笑みを浮かべているからである。
逃腰だった私の両腕を掴んでいた貴ちゃんと瑠衣くんは、仕事があるからといなくなってしまった。なぜか今夏樹くんとマンツーマン状態なのだ。
この独特な緊張感がフルーツタルトに伸びる手を止めているような気がする。