【完】おにぎり恋愛日和‼︎
「あ、天音くん」
ふと下を見下ろすと、丁度マンションから出てきた天音くんの姿があった。どこに車を止めてきたんだろう。まさか地下鉄乗ってきたわけじゃあるまい、と考えていた時。
「あ、」
彼はその場で立ち止まって振り返った。そしてこっちを見上げた天音くんと、目が合う。もしや、私の視線が煩かっただろうか。
少し遠くてどんな顔をしているかはっきりとは分からないけれど、天音くんは変装用のマスクを顎の下までずり下ろした。
そして彼は口を動かす。
"好きだよ"
「───、ずるい」
そう微笑んで、今度こそ天音くんは前を向いて歩き始めてしまった。