【完】おにぎり恋愛日和‼︎

彼の言う「そのまま」というのは、光春くんから借りた上下スウェットである。この姿でホテルに行けというのだろうか。万が一世間にバレようものなら、私は100人中100人に叩かれるだろう。昨日着てきたワンピースがあるけれど、それでもホテルディナーにはカジュアルすぎる。

するとパニックになっている私を見て、光春くんはきょとんとした顔で口を開いた。

「大丈夫、今から見に行くから」
「何を?」
「三鈴のワンピース」

そう言われた瞬間、私たちの間で数秒の沈黙が流れる。

「光春くん」
「何?」
「説明が足りないとよく言われませんか?」

そう尋ねると彼は「よく言われる」と、悪びれることもなく楽しそうに口角を上げるだけだった。
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