【完】おにぎり恋愛日和‼︎
「病人って感じの顔してるね」
「どんな顔」
「凄くしんどそうな顔」
寝室のベッドで天音くんは横になっていた。ここも黒で纏められたシンプルな部屋だった。どーんと大きなキングサイズベッドの存在感が凄い。贅沢すぎて羨ましい。
ベット脇のサイドテーブルには何かの台本らしきものが数冊置いてあって、さては体調悪いのに仕事してたなと察する。相変わらず仕事第一人間だなぁ、とブレないところに心の中で笑った。
「たまご雑炊作ったんだけど食べれる?」
「食べる」
「じゃあ残していいから、少しでも食べてね」
たまご雑炊をテーブルに置くと、天音くんはゆっくりと身体を起こした。
そして湯気のたつ雑炊をじーっと見つめて、彼はひと言。
「・・・おにぎりじゃないの」
「当たり前でしょ。消化に良いものがいいからたまご雑炊にしたから。熱いから気を付けて」
なぜおにぎりだと思った、天音くんよ。病人におにぎりは出しません。そう言って、ふいっと顔を晒す。