君のハグなんていらない!
「ウェーイ、ウェーイ」
「ウェーイ」って何語?
謎の「ウェーイ」の掛け声が、ハイタッチのパチンという爽やかな音と共に、陽気に飛び交う。
集まったのは、野球部の全メンバー、応援団、チアリーダー、吹奏楽部の有志たち。そして顧問の先生に、校長先生まで。
つい先日行われた試合の打ち上げが、学校の家庭科調理室で盛大に行われた。
校舎の外壁には、最上階から最下層にまで及ぶ、野球部を激励する立派すぎるほどの垂れ幕が掲げられていた。とはいえ、うちの学校の野球部は特別強いわけでも、全国的な注目校でもない。ほんの少し前までは弱小で地味で無名な普通科の高校だった。それが、甲子園初出場を果たしたことで、一気に注目の的となったのだから、浮かれるのも仕方ない。学校の誇りであることは間違いない。
結果は、初戦敗退。
だけど悔しがったり、涙を流したりする人はいなかった。みんな笑顔だった。
甲子園まで行けたんだから、もう満足。
所詮それが、弱小校野球部の、満足度の絶頂なのだ。
甲子園の土だけはちゃっかり袋に詰めて持ち帰ちゃって、甲子園を遠足か何かと勘違いしているとしか思えない。
甲子園に行きたかったすべての球児に謝れ。