『苦しめてごめん・・』―消せない過ちを悔いる日々―
 彼女が身体をしならせ喘ぎ始める。

 そして切羽詰まった切ない声で神尾を求める。

 あまり焦らし過ぎて面倒なことになるよりもと、フィニッシュに向かう。

 それは飲み込まれるような感触を伴うものだった。
 

 きっとこの女は多くの男を知っているに違いない。
 

 そんな埒も無いことを頭に浮かべ神尾は煩悩の渦へと身を投じた。


そして静かな賢者タイムが訪れ・・
かなりの運動量をこなした感があり、神尾は猛烈な疲労感に襲われるのだった。



 根米の身体を貪っている神尾という男、ぱっと見イケメン、よく見てもイケメン。


 瞳が子供のようにクリっとしてかわいく見えるような綺麗な二重瞼を持ち、眉毛は
八の字を逆さにしたような形状をしている。



 それが男らしくて強い印象を与える。


 そして鼻筋は高く伸びており眉と相まって、甘いルックスに反し意志の強さを表している。



 一連のプレイが終わると根米は甘えようとするのだが、神尾はホテルでコトが終わった後の
身体でそんなことに時間を使うと絶対寝てしまいそうだった。

 そうなると泊まる羽目になるのは目に見えている為、上手く躱し根米がとっとと
洋服を着ずベッドから離れようとしない時は置いてさっさと帰ることにしている。


 彼女はいつも余韻を味わいたいような素振りを見せる。

 神尾は家ならまだしも、とてもこんなラブホで長居などする気になれない。
 

 早く家に帰って風呂に入りゆっくり寛ぎたいと思う。

 それは翌日が平日であろうと休日であろうと考えは変わらない。


                ◇◇ ◇ ◇
 


 うきうき気分で週明け出勤した根米は昼休み休憩に入る30分前、お手洗いで
鉢合わせした先輩の寺島まあこ(てらじままあこ)に声を掛けられた。


 いつもなら大抵『今日のランチは何にするの?』とか差しさわりのない
挨拶代わりのことを訊かれておしまいなのに、この日は違っていた。


「ね、何かいいことあった?」などと訊いてきた寺島はものすごく楽し気な様子で
横幅いっぱいに口角を上げている。


 確かに一昨日神尾と熱い夜を過ごしその余韻を手放すのがもったいなくて、脳内では
あの日の濃厚な時間を未だに思い出しては浸っている根米は『ありましたとも』と
言いたいところだった。


・・がぐっと我慢した。


 まだ確実にステディな関係とは言い難い状況でふたりの関係が後退するのは避けたいと考えたからだった。



「最近高校の時の友達と久しぶりに会ってワイワイ楽しくやったからかな」
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